終わりは始まりか ~私達の場合~
「ない。」

そんな風に素っ気なく答えながら、私は伊吹の持っている図面を覗き込む。

「あいつらしくないな。」

伊吹はお父さんと同じことを言った。

「美月?」

「えっ?」

伊吹はその大きな右手で私の頬を撫でた。

「泣きそうな顔をしている。」

思いがけない伊吹の言葉に目を見開いた。

「そんなことないよ。やっぱりいつも来る人が来ないと心配は心配よね。」

「強がらなくていい。」

伊吹のその言葉をきっかけにしたように、私の頬を一筋の涙がつたった。

お母さんの葬式の日には、あんなに伊吹に優しい言葉を掛けてもらったのに出なかった涙…。

「きっとあいつなりの事情があったんだろう。そんなに気にするな。」

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