勇気の魔法は恋の始まり。
聞いていた流星が思考を放り投げて笑った。

 クラスメイトもつられて笑ったが、水帆は理解できずにとりあえず周りに合わせて微笑んだ。

 北斗はそんな水帆に気付いた。

「…いつか、わかる時がくるよ。すいちゃんは。」

「えっ?なん…」

「たっだいまーーーー!」

 北斗の囁きに水帆が聞き返そうとしたとき、杏がご機嫌でドアを開けた。

「涼しい涼しい」と満足げに繰り返しながら水帆にイチゴミルクを渡す。

 そのあとまた、いつかと同じようにぽいぽいと冷たいジュースを同級生に投げる。

 杏のせいで、差し入れは投げるという謎の風習が出来てしまって、今では誰が買ってきても缶ジュースが宙を舞う。
< 31 / 50 >

この作品をシェア

pagetop