政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
指定された時間の十分前には待ち合わせ場所に着いていた。叔母はすでに来ていた。

祖母は今朝、急に熱を出してしまったため欠席していた。祖母は病院で治療を受けて落ち着いているから、心配はいらないと叔母に言われ、私は胸を撫でおろした。

その旨を先方にきちんと説明しなければと思案していると、すでに約束の時間になっていた。

緊張のため段々と落ち着かなくなってきた私は、周囲を見回す。けれどそれらしき男性は見当たらない。

散々言われていたのでお見合い相手の写真はきちんと見たし、経歴も読んで頭に入れてきた。

今日の私の装いは叔母に相談して選んだ、グレンチェックのワンピースに白のノーカラーのジャケットだ。

顔周りが暗くなるのをさけるように髪もハーフアップにしている。眼鏡を外し、メイクもできるだけ血色がよく見えるように、普段の最低限のものではなく、きちんと施しているつもりだ。

ティーサロンにはカチャカチャという陶器の音と、ゆったりした人々の話し声が僅かに響いている。周囲の喧騒からかけ離れた穏やかな時間が流れている。

「遅いわね、何かあったのかしら? ちょっと電話で確認してくるわ」
約束の時間を三十分近く過ぎた時、そう言って叔母がバッグを手に立ち上がった。

今日の叔母は淡いピンクベージュのスーツを着ている。叔母の柔らかな雰囲気にとても似合っている。頷く私に微笑んで、叔母はサロンを出ていった。

私はもう一度周囲を見渡してから俯いて、小さく息を吐く。膝に置いたままの両手をギュッと握りしめる。

もしかしてお見合いが嫌になった? 何か事情があったのだろうか?

状況がわからず、不安がこみ上げる。
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