政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「好きあっている者同士が結婚する。何もおかしくないわ」
ダメ押しのように母が言い切る。

「でもお見合いからあれよあれよと結婚が決まって正直、戸惑ってはいるの」
こんなに性急に事をすすめる必要があるのかと思っているとは口にできなかった。

「あら、恋愛も結婚もタイミングと勢いが大事って言うでしょ?」
母は呑気にそんなことを言う。

祖母は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。あの厳格な祖母からどうしてこんな明るい思考の母が産まれたのか疑問だ。

「いいじゃない。環さんは優良物件なんだし! 結婚してどうしても無理だったらその時に考えればいいの。彩乃ちゃんはなんでも難しく先のことばかり心配しすぎなのよ。やってみなければわからないことなんて世の中にはいっぱいあるのよ」

「結婚はそんなに簡単なものではないよ」
祖母が溜め息混じりに自分の娘を諭す。

さすがの私もその意見には賛成だ。これから策略結婚をしようとしている私がいうのはおかしな話だけど。

「もう、母さんは黙ってて。素敵な人だと思うわ、環さん。彩乃ちゃんのことをよく理解してくれている。あなたのことを話す時、とても優しい目をしているの。ママはなんの心配もしていないわ」
ふわっと何をも凌駕する笑みを浮かべて母はそう言い切る。

母の発言にボッと頬が紅潮する。母の言葉が妙に胸の中に残った。

母はまだ何か言いたそうな祖母と私を追い立てて、和室に戻った。彼は相変わらずの優美な微笑みを浮かべて、私を迎えてくれた。

そんな調子で彼と私は着々と結婚までの道のりを歩むことになった。
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