政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
面長の輪郭に垂れ目がちの二重瞼。社内ではトレードマークのようになってしまっている眼鏡に、ひとつに束ねただけの髪という地味な私。

彼とは真逆の見た目の私に、魅力があるとは思えなかった。

私はこれまで恋をしたことがなかった。そもそも異性とろくに話せない私は、恋をすることを諦めていた。実家から条件を呑んで出てきたにもかかわらず。

優しい人だった。なのに私が傷つけた。ほかに好きな人ができるぐらいに。やはり私は彼と交際をすべきではなかった。

「彩乃は色白だし、華奢で綺麗だもの。向こうも手に入れたくて必死だったのよ」
眞子が溜め息混じりに言う。

「そんなこと、ありえないよ」
彼女の言葉に驚いて、否定する。

「そう思ってるのは彩乃だけ。幼馴染の私が言うんだから間違いないわよ」
運ばれてきたミネストローネをスプーンで掬いながら、眞子が話す。

私から見れば、百六十五センチメートルの身長に、猫のように少し吊りあがった綺麗な二重の眞子のほうが余程魅力的だと思う。私の知る限り、中学校時代から眞子に彼氏が途切れたことはない。

「私の努力が足りなかったの」
自嘲気味に言うと、親友は痛まし気な表情を見せた。

「彩乃は努力していたわよ! 好きな女ができたのはあの男でしょ! 傷つけられたのは彩乃よ?」
彼女がフォローをしてくれる。

私は小さく首を横に振った。

料理もお洒落も勉強して、彼に似合う女性になるために努力を重ねてきたつもりだった。それでも彼が一番望む気持ちを返せなかった。
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