政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「どうして半年も付き合っていたのよ」
眞子がイラ立ったように言う。

「……ゆっくり好きになってくれたらいいって言われたから。条件のこともあってそれに甘えてしまったの……もっと早く別れを切り出すべきだった……矛盾してるよね」
私の返答に眞子はグッと押し黙った。

彼は悪くない。中途半端なのは私だ。
もっと早く別れを告げるべきだった。

「それでもあの男が元々望んだことでしょ! 彩乃が無理強いしたわけじゃないわ!」
早口に捲したて、グサッと眞子はフォークでサラダのレタスを突き刺す。彼女の怒りが伝わってくる。

「あんな男、さっさと忘れなさい! もっといい男を紹介してあげるから!」
彼女の怒りの剣幕に押されながら、首を横に振る。


私の実家は東京郊外にある。都内からは電車で二時間ほどかかる場所だ。私はひとり娘で兄弟姉妹はいない。近所に住んでいたしっかり者の眞子が姉のような存在だった。

会社関係や眞子以外の友人に話したことはないが、私の母方の実家、澤井家は代々続く名家といわれている。とは言っても資産家だとかそういうものではなく、ただの歴史ある家というような認識だ。

祖父は十年前に他界し、現在は祖母が女当主となっている。

実家周辺の土地、建物は全て澤井家のものだという。祖母はとても厳格な人だ。きっちり結い上げた白髪に隙の無い和装には品格が漂っていて、私は幼い頃からとても厳しく躾けられた。
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