愛の囁き☆私は強くない番外編☆
病院を出たのが、遅くなってしまい待ち合わせ場所のお店、向日葵に着いたのは19時ギリギリだった。

初夏の蒸し暑さが、香里の肌をじとっと湿らしていた。
走ってきたせいもあり、額に汗を滲ませながら、店内に入った。

「いらっしゃいませ〜、お一人ですかあ?」

元気な店員の声に、待ち合わせなんですが、と喋ろうとした瞬間、碧が声をかけてきた。

「香里!ここよ!」

「あ、うん。すみません」

碧に返事をしながら、対応してくれ店員にも頭を下げ、店の奥に進んだ。

「遅かったじゃない、なんかあったの?」

「ううん。電車がね、ちょっと遅れただけ」

「そっか。ここ座って」

碧に勧められるまま、ここ、と言われた碧の横に座った。

顔を上げた香里は、戸惑い後悔していた。

碧以外、知らない人ばっかり。
人見知りなのに、来なきゃよかったかも。

そんな香里を気にも留めず、幹事である碧が話を始めた。

「では、全員揃ったので、始めたいと思います。自己紹介は後にして、とりあえず、乾杯からしますか!はいっ!乾杯ー!」

「かんぱーい!」


碧に渡されたビールを片手に、香里も小さく乾杯と手を伸ばした。
ちょうど、その時香里の前に座っていた人と手がぶつかった。

「あ、すみません」

「大丈夫。君も大丈夫?」

「あ、はい」

あー緊張する。
病院での飲み会と全然違うんだもん。
これが合コンか…

周りの勢いに当てられている香里に、前に座っていた男が声をかけてきた。

「君の番だよ?」

「え?あ…」

「自己紹介、はい」

順番が回ってきた事に、気付いていなかった香里は慌てて挨拶をした。

「えっと…病院で勤めてます。浜口香里です。よろしくお願いします」

それだけ言うと頭を下げた。

周りから声がかかる。

「病院?もしかしてナース?」
「香里ちゃん、ナースなんだ。俺看病してもらおうっかなぁ」

「ははっ」

あー、帰りたい。
この反応が少し嫌だった。

一通り自己紹介が終わり、それぞれで話が始まった。

香里は話には加わらず、目の前にある料理を楽しんでいた。

あー。やっぱりここの料理は美味しい♪

「香里ちゃん?」

急に話しかけられて、驚く香里。

「は、はいっ」

「…合コン初めて?」

「え?あ、あの」

「俺、拓真。奥菜拓真、聞いてなかったでしょ?自己紹介」


あ、見られてたんだ。
人の話聞いてなかったの…

急に話しかけられ、戸惑う香里に拓真は続けた。

「緊張しないで、ここだけでも楽しんだらいいんだから」

「は、はい。ありがとうございます」

私は、奥菜さんに頭を下げた。
その時初めて、奥菜さんの顔が目に入った。

カッコいい…
一目惚れ…だった。




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