一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


(帰りましょうと提案したら不自然? 別の話題を振るよりマシ?)


心臓が胸の内で暴れる中、メアリが行動に悩んでいる間にユリウスが「メアリ」と呼ぶ。

薄く笑みを浮かべているけれど目に柔らかさはなく、メアリは緊張にコクリと唾を飲み込んだ。


「さっき君は俺が背後から助けたことに驚きもしなかったけれど、もしかして……俺がそばにいたことを知っていた?」


ああ、やはり。と、メアリの背筋に緊張が走る。

正直に告げてもいいものか。

ただ部下から報告を受けていただけならば、首を縦に振るのもありだ。

しかし、思い返してみれば、話していた相手は騎士服も鎧も纏っていなかった。

下手に首を突っ込むべきではないと判断したメアリは、出来る限り表情を変えないように心がけつつ頭を振る。


「い、いいえ。驚きすぎて、反応できなかっただけです」


何度も助けていただいて申し訳ありません、ありがとうございますとお辞儀をするメアリを、ユリウスは追求せずに微笑んだ。


「俺は君を守る剣だ。助けるのは当然だろう? さあ、そろそろ帰ろうか」


あまり長いこと部屋にいないとバレてしまうと、ユリウスはメアリの背を優しく押した。


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