とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
『どうしたんだ?』
珍しく一矢が不機嫌なオーラを漂わせて、隣に座りテレビをつける。
なのに苛々しているのか、リモコンでチャンネルを変えていくだけだ。
『妹に変な虫がよく群がるんだよ。あいつもさっさと恋人でも作ればいいのに』
『ああ、紗矢ちゃんは可愛いからね。変な虫ってどんな?』
『うちの会社の内定を狙うとか、取引先の社長の息子とか? 父さんの部下とか。あと家が金持ちだからって理由で近づいてくるのもいる。純粋に近づいてくる奴らが、必死なそいつらに圧倒されて近づいてこないしな』
『ふうん。大変だねえ』
過保護すぎじゃないのか。
俺の最初の感想はそれだ。子どもでもないし、高校生の女の子に、メールをチェックするほど過保護で大丈夫だろうか。
こんな幸せな家庭の中で、彼女だけ家のせいで縛られてるようで少し哀れに思えた。
そんな彼女から偶に向けられる熱い視線も、男性に慣れてない故だろうと気づかない振りもしていた。
でも俺で男性に慣れるのも悪くないのかなと、少し彼女を自分と重ねてみている部分もあった。
一矢が家を出て一人暮らしをすることになり、おじさんが『紗矢は家から出さない』と口を酸っぱくして言っていた時、彼女は進路に悩んでいるように思えた。
おじさんと一矢が泥酔して、おばさんがのんきに音楽を聴きながら洗い物をしていた時、勉強をしていた彼女に近づいて、力になれないか尋ねた。
『我慢をしなくてもいいんだよ』と、進路ぐらい好きにすればいい。
俺も分家の口出しなんて、みじんも聞かず医大に進学したのだし、誰に気兼ねする必要もない。