とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
仕事が終わるころには『南城紗矢は、野菜しか入っていない冷蔵庫からささっと七品作って、古舘外科医院の院長の胃袋を射止めた』というデマが会社中に広まっていた。
伝言ゲームもできない人間しかいないうちの企業に不安しかない。
このデマが、彼の元にまで届いたら、彼は笑い死ぬかもしれない。
本当、料理ぐらいはちゃんとしないといけない。
結納は一週間後に、ホテル『シャングリラ』というクラシックホテルで行われる。ロビーのステンドグラスが美しいホテルだけど、屋上に庭園ができたらしい。洋風のクラシックホテルの屋上に、日本庭園っておかしな話。
仲人を引き受けてくださる方がシャングリラのオーナーだから予約でいっぱいだったのに急遽貸していただけることになったようだ。
喬一さんがお世話になった人で、父の恩師だという。今時、仲人って聞きなれない言葉だからちょっと新鮮だったりする。
「さて。今日も定時に帰るからね!」
「あら、古舘さんったら張り切ってるね」
小春が椅子を回転させながら私のデスクにやってきた。
この友人の口の軽さに、頬を抓ってやろうかと思ったが今は帰るのが先だ。