とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
「そう。彼の家を覗きに行くの。医院の後ろに家があるらしくて、私の荷物をいれるならどれぐらいの広さかちゃんと見ておこうかって」
「まあ、結婚前の男女が家に」
「そう。まあ喬一さんは今日は夜勤ですがね」
お借りした鍵を見せると、明らかに残念そうな顔をする。
露骨すぎるけど、ここまではっきり顔に出してくれる方が楽だ。
「そういえば、喬一さん、毎日お弁当持って来てたから、家に女がいるんじゃないかって医院の事務の子が言ってたらしいよ」
「お弁当? お姉さんじゃないかな」
「ああ、なるほど」
小春は納得してくれたけど、私はロッカーに戻って気づいた。
医院の後ろに家を建ててるのに、わざわざ呉服屋に戻ってお弁当を取りに行ったりするのかな。
もしかして、恋人がいる?
お弁当を作ってくれる恋人がいるのに、世間体を気にして私と結婚を進めてる?
打算的って言ってたけど、もしかして。
嫌な予感が胸を過ったと同時にロッカーに入れていた携帯がけたたましく鳴り出した。
こんな時に限って、マナーにし忘れていたらしい。
電話の相手は、田舎にいるおばあちゃんだった。