とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。



 式当日、早朝5時まで喬一さんは急患の手術をしていたんだから、驚いた。

 喬一さんはお婆ちゃんとの初対面に大喜びだった。いつもお野菜が美味しい、私が作った料理で癒されてると、多大な感謝を述べ、おばあちゃんを笑顔にしてくれた。
 おばあちゃんとお爺ちゃんは、シャングリラのオーナーとあいさつを交わし談笑している。いつも畑仕事の土だらけの仕事着を脱ぎ、着物に着替えたおばあちゃんは、上品でとても若々しい。
 私の身内に挨拶を交わして、私の元へ駆け寄ると顔を綻ばせる。
 

 疲れを見せない彼が、私のドレス姿に『一瞬で元気になったよ』と笑った。

 もう少し、不満とか愚痴とか、隙を見せてくれてもいいのに私の目の前にいる彼はいつも完璧で、私はやはり敵わないと思ってしまったのだ。


「ウエディングドレスも可愛かったけど、その色の着物も可愛いね」
 両家族と仲人さんたちは、まだ中で宴会中だが私たちは庭を散策して東屋で座ってお互いの姿をようやくゆっくり見れた。
 喬一さんの紋付き袴姿も、引き締まった体のラインが見えて格好いい。

「私も、選んでいただいた着物がすっごく素敵で気に入ってるの!」

 喬一さんのお姉さんは、竹を割ったような性格の方で、裏表がないはっきりされたとても綺麗な人だった。
 旦那さんはうちの父が早々にお酒をすすめ断り切れずに一杯の日本酒を飲み真っ赤になり席を外してしまっていた。優しそうな人。お姉さんがピンと張ったピアノ線のようだとしたら、柔軟なゴムのような柔らかい笑顔の朗らかな人だった。

 お姉さんは、私ははっきりした顔だから柔らかい色が似合うと着物を選んでくれた。
 結婚式の着物と言えば、赤かなあってぼんやり思っていたんだけど、選んでいただいたのはピンクベージュに大輪の花が咲き乱れたレトロでモダンなお洒落な柄だった。

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