とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。


「えー、喬一さん甘いもの苦手ですよね」
「紗矢は特別に決まってるだろ」
 お弁当箱を大事そうに持ちながら、こっちを見てにやけている。
 だが大事そうに仕舞いながら、少し残念そうに溜息を吐いた。

「でもちょっと残念だよなあ」
「何が、ですか」
「誕生日だと黙っていて、当日焦った紗矢を見るのも悪くないなと思っていたんだ」
「ええ、酷いです」

 私が少し大きな声を出すと同時に、オーナーが階段を上がってこっちに向かってくる。
 白石さんの持っているお皿から、焼き立てのパンのいい香りがしていた。

「プレゼントが欲しいわけじゃなかったんだ。ただ俺のために慌てふためく紗矢は可愛いだろうなと」
「意地悪な発想ですから、それ」

 真っ赤になって反論するが、白石さんがいる手前、抑え気味だ。

「おまたせしました。あー、っと勝手に見てすいません、それ俺の好きな人の洋書シリーズだ」

 お皿を並べながら、白石さんがお弁当箱を覗き込む。
 どうやらシリーズもので、尚且つベストセラーになった洋書をお弁当箱にしているらしい。
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