あなたの愛になりたい
それは“人”で無くなった瞬間なのだろう。
「気がついたら俺はそいつの首筋に牙をたてていた。このまま血を飲み続けては死んでしまうだろうと分かっているのに満たされていく喉の渇きが、俺を止めてくれることはなかった。数日ぶりに満たされて、立ち上がった俺の変わりに、目の前は首筋に毒々しい牙と血の痕が残った人間が転がってた」
想像をすると、あまりにも惨い。
けれどこの人を責めることができるかと言われれば難しい。
亡くなった方にも家族があっただろう、けれどこの人にも家族があった。
そこから知らずのうちに引き離されて自分の意思とは関係の無いところで人でなくなった。
餓えるものを、潤したいと思うのは……生きたいと思うのは、命あるものの本能だろう。
それは、人が植物を、動物を捕食するのと同じ本能。
「動かなくなったそいつを見て、怖くなって逃げ出だしたくなった。だけど足は動かなくて、ただ震えてた。今思えば、自分のしてしまったことのおぞましさに震えたんだろうな。その様子を一部始終見ていたリョウが言ったんだよ。『それはもう、お前の本能になってしまったんだよ。生かすも殺すも仲間にするのも、全てお前のさじ加減。ようこそ、こちらの世界へ』なんてな。にやにやと笑ってそれ以上何を言うわけでもなく、去って行った。まるで幻のように、な。だけど目の前にある骸が現実を突き付けてくる。否が応にも俺を人ではないってな。気まぐれなヴァンパイアの暇つぶしの道具にされたんだろう。あれからリョウの姿は見てねぇな」
私が今この人に感じている感情は、何と表せばいいのだろうか。
恐怖?憐れみ?それとも同情?どの言葉にも当てはまらなくて。
あぁなんだろう、胸が苦しい。