癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
タクシーが自宅に着くと、隣の家の玄関から光琉が出てきた。

「遙季、大丈夫か?」

光琉は遙季に駆け寄ると、遙季の左腕をそっと掴んで

「痛むか?可哀想に」

と怪訝な顔をした。

痛み止めが効いているのか、痛みはない。遙季は首を振った。

「光琉くん、遙季は動揺しているようなの。警察でもパニックになっちゃって、少し横になってたのよ。だから今日はもう,,,ごめんね」

光琉は、はーっ、とため息をついた。

「明日からは絶対1人で登下校させないからな。今日はゆっくり休むんだぞ」

゛一緒に゛

という表現に遙季はビクッとする。

遙季は゛光琉と登下校しているために絡まれた゛という部分はまだ警察に話していない。

毅の幻覚妄想状態が落ち着かなければ、本当のことはわからないだろう。

光琉の母、真奈美だって心配するだろうし、何より遙季の母だって光琉とギクシャクしてしまうかもしれない。

立ち尽くして俯く遙季の顔を、光琉はゆっくりと覗き込んだ。

「また、明日,,,な?」

遙季は頷かずに身を翻すと、玄関から部屋に入っていった。

「遙季!」

「ごめんなさいね。光琉くん、今日はありがとう。光琉くんが心配してくれているのはわかってるのに、あの子も余裕がないのよ」

祐子はため息をついた。

「大丈夫です。僕の方こそ大事なときに側にいなくて申し訳ありませんでした」

「何を言ってるの。たまたま運が悪かったのよ。さあ光琉くんも部屋に入って」

祐子はそう言うと、光琉と別れた。


< 16 / 86 >

この作品をシェア

pagetop