癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
パニック症状、過換気が落ち着いた遙季は、母と共に待合室に移動した。

警察官によると、病院に搬送された毅はシンナー中毒による軽犯罪の常習犯だったが、これまでナイフで人を刺したことはなかった。

今回はシンナーの吸入量が多く、幻覚、幻聴、幻視が著明に現れており、質問をしても返ってくる答えが曖昧・抽象的過ぎて、現段階では、はっきりしたことがわからないという。

毅の両親は県外にいるため、すぐには謝罪に来られないとのことだった。

「後日、また連絡させて頂きます」

警察官が遙季と祐子にお辞儀をした。

少し離れたところに置いてある長椅子に腰かけていた悠生とその父親が立ち上がるのが見えた。

「それでは私達も帰宅します。雪村さん、お大事に」

悠生と悠生の父親が頭を下げる。

「こちらこそ、真島くんにはお世話になりました。巻き込んで怪我までさせて申し訳ありません」

遙季も祐子と共に頭を下げた。

「いえいえ、喧嘩ではなく人助けで警察に呼ばれるなんて、親としては感慨無量ですよ」

と、悠生の父親は悠生を見て笑った。

悠生もまんざらでもない表情だ。

「ハル、また明日な」

遙季は小さく頷いて、真島親子と別れた。
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