癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
「あの日のこと、ずっと後悔していたんです」

3人は先程の現場近くのコーヒーショップに入った。

若菜は、遙季と光琉の前に座り、俯いたまま話を始めた。

「あの日って?」

何も知らない光琉は、素直に若菜に質問を投げ掛けた。

「八代くんは、雪村さんから何も聞かなかったの?」

若菜は驚いたように顔をあげて光琉を見たが、やはり、すぐに目を逸らした。

「光琉は、少し、黙っててくれる、かな?」

遙季は宥めるように、ゆっくりと光琉に言った。

光琉は不可解な顔をしながらも、最後には納得して黙っていてくれた。

「中村さん、どうぞ続けて。私にとってあの時のことはもう゛乗り越えた過去゛なんです」

遙季は笑顔で若菜の手を取った。

「ごめんなさい、本当に,,,ごめんなさい,,,」

泣き出した若菜が話し出すのを、遙季は辛抱強く待つことにした。

若菜と同じように、遙季も若菜の行く末をずっと案じていたのだ。

幸いに体の傷も心の傷も軽傷で済んだ。そのことを知って、若菜にも楽になってもらいたい、遙季は本心からそう思っていた。

光琉も精神科医だ。無理に若菜を話させようとはしない。

長い長い沈黙と、周囲の話し声、若菜のすすり泣く声が、カフェの一角を微妙な雰囲気にしていた。
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