癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
遙季の母、祐子は今回のことと事件の関係を知っているだろうか?

知っていたとしても、K大学への進学を隠していた位だ。今さら話してくれるとは思えない。

だったらあの人に聞こう。

光琉は鈴村医療センターに向かっていた。

「僕に御用って何かな?実習の申し込み?」

白衣のポケットに両手を突っ込んで立っている童顔の精神科医。鈴村雅祥は、少年のような外見をしていた。

鈴村医療センターはM大の精神科実習指定施設でもある。光琉は所属と名前を述べ挨拶をし

「いえ、僕はまだ3年生ですし、個人的なことです」

と頭を下げた。

そんな光琉を雅祥は珍しそうに眺めていた。

「君みたいなイケメン君に好かれる、もしくは恨まれるようなこと僕したかなー?」

独特のしゃべり方は、光琉を馬鹿にしているようにも聞こえてムッとするがここは我慢だ。

「雪村遙季のことです」

「遙季,,,ちゃん?ああ、彼女がどうかした?」

たくさんいる患者の中で、すぐに思い出せるなんて、雅祥と遙季の関係は深いのだと嫉妬させられる。

「2年前の事件に、僕が関わっているって本当ですか?」

雅祥は急に真面目な顔つきになり、

「君も医学生なら、主治医が簡単に患者のプライベートなことを話すはずがないと知っているはずだろう?それとも僕を馬鹿にしてる?」

と言って光琉をたしなめた。

「いえ、僕も関わってるなら当事者として知る権利はあると思います。現に思い悩んでいるし、実害も被ってる!」

光琉も吐き捨てるように言った。

もうどうすればいいかわからないし、打つ手もない。遙季に離れられてしまったら守ることもできない。

光琉の顔は苦痛で歪んでいた。
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