癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
「その日の警察署と、翌日の学校でフラッシュバックが起こった。光琉の後ろに中村さんが立ってるのが見えたの。中村さんだけじゃない,,,。本当は、入学してから何人かの先輩に呼び出されたり、私物を隠されたりしてたんだ」

知らないところでいじめが行われていたのか?

光琉の心にチクリと影が射すが、今さら蒸し返すこともできない。

遙季は光琉の胸に顔を埋めたまま呟いた。

「私が何かされるのは構わない。でも、光琉が私のために犠牲になるのは嫌。,,,あの時の悠生みたいに体を傷つけられるのも嫌。心だって傷つけたくないの!」

光琉は泣いている遙季を固く抱き締めた。

「遙季の気持ちはわかった。だけどな、俺は他人に体や心を傷つけられるより、遙季の態度で傷つけられるほうが辛かったんだぞ?」

遙季は俯いたまま小さく頷いた。

「これからは一緒に悩んで傷ついて、困ったときには助け合いたい。それに,,,」

光琉は、遙季の両頬に両手をのせると、顔を近づけて唇に優しく口付けた。

「こうして遙季とキスしたり、一つになる喜びを俺から奪わないでくれ,,,」

遙季は光琉をうっとりと見つめ、光琉も遙季を愛しく思う気持ちを溢れさせていた。

「まあ、俺もお前も、あの時、"はじめて"を捨てといて良かったよな。相性最高だったから、他には目がいかなかったのかも」

ニヤリと笑う光琉は、やっぱり策士だ。

遙季はバシッと光琉の背中を叩いた。

「ばか光琉。私はべ、別にもっと後でも良かったのに、光琉が盛るから,,,」

「でも、よかっただろ?さっきだって,,,」

「ん,,,」

こうして、二人の8年ぶりの素直な夜は甘く更けていくのだった。


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