癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
「僕はその頃から君のことを知っていたよ。八代のお陰で有名人だったもんね」

当時の遙季は、女子の先輩からやっかみや嫌がらせを受けることはあっても、男子の先輩からも注目を浴びていたとは思っていなかった。

「ある日、突然、若菜が転校した。そのあとから君達は一緒に行動しなくなったよね。何かあるなあって思って調べたら、あの事件に行き当たった」

事件を見ていた人間は遙季と悠生、警察と通報してくれた男性だけだと思っていたが、警察と救急車がきた頃には結構な野次馬がいたようにも思う。

ことが事だけに、学校側にも事件を内密にしてもらっていたことに加え、遙季が心理的に追い詰められて倒れた経緯もあることから、面と向かって遙季に事件のことを尋ねてくる生徒はいなかった。

「犯人は捕まったって言ってたけど、若菜が関係してたんだろう?」

ニヤリと笑う努には嫌悪の感情しか感じない。今さらなぜ、この人はあの事件のことを蒸し返して来るのだろうか?

「若菜は逃げきったつもりだったけど、何かあったかなんてすぐわかる。証拠を集めて問い詰めたら、簡単に白状したよ」

「なんのためにそんなことを,,,」

「そんなの、君を好きになったからに決まってるよ」

遙季を見つめる目が、まるで爬虫類のように光った。

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