【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「あぁ、あれはあなたにプレゼントしたものだから、そのまま持っていてください」

「え? そんなわけにはいきません」

 まさか、貸し出し用のドレスだと思って気軽に借りたのに、プレゼントだなんてとんでもない。

「そこまでしていただく必要はありません」

 両手を振って断る。しかし神永さんは譲らない。

「必要かどうかは、私が決めることです。あなたからドレスを受け取るつもりはありません。買い取っているので私が持っていても困りますから」

「そんな……」

 そこまで言われると、強く出ることもできない。

「では、こうしましょう」

 困っているわたしを見て、神永さんは何かを思いついたようだ。

「今度あのドレスを着て私とデートしましょうね」

「はぁ!?」

 突拍子もない申し出に、品のない声を出してしまう。

「あ、あの。デートって……」

 こんなふうにストレートに誘われたことなんて人生で初めてだ。

「いいですよね? それで……あ、あっと。長居しすぎてしまいました。予定がありますので、失礼しますね」

 うろたえているわたしをおいて、先に応接室を出てしまった神永さんを慌てておいかける。

「ちょっと、あの……困ります」

 わたしの声に、すでに店頭から外に出ようとしていた神永さんの足が止まる。

「困りますと言われても、私も困ります。言いたくはありませんでしたが、私が尾関さんの顧客ですよね。お客様は神様とはいいませんが、少しくらい折れてくださってもよろしいんではないでしょうか?」

「う……っ。それは……」

 そう言われてしまうと、ぐうの音も出なくなってしまう。

「では、そういうことで。よろしくお願いしますね」

 にっこりと微笑むと、待たせてあった車に乗りそのまま走り去ってしまった。

 取り残されたわたしは、嵐のような一時間弱の出来事がまるで夢だったかのように呆然とその場に立ったまま彼を見送ったのだった。

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