【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「いい香りですね」

「よかったです。神永は少し時間がかかりますので、今しばらくお待ちください。それと先ほどは、大変失礼いたしました。実を申しますと、社長の元には色々な方の訪問がありまして。

中には歓迎できない方もいらっしゃるので。一瞬尾関さまのことも疑ってしまいました。申し訳ございませんでした」

 坂上さんに丁寧に頭を下げられ、わたしの方が恐縮する。

「いえ、こちらこそきちんと名刺をお渡しして、お取り次ぎをお願いするべきでした」

「次にいらっしゃったときには、最初から笑顔でお迎えいたしますね」

 次も……あるのだろうか。今日できっぱり断られそうな気がする。もしかして「本当に来たの?」なんて言われると、ちょっと――いや、かなりへこみそうだ。

「もちろん、式場をご利用さなるお客様としてきていただいてもかまいませんよ」

「残念ながら、その予定は今のところ……」

 わたしの言葉に坂上さんが「わたしもです!」と応え、お互いクスクスと笑った。

 なんだかすっかり打ち解けてしまったわたしが、世間話をしているとスタッフルームから神永さんが出てきた。

 しかしその手には、鞄と上着を持っている。
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