家庭訪問は恋の始まり
「あ、まずは予約をしてください。
普通の病院と違って、診察に時間が
かかるので、すぐには見てもらえないんです。
早くて2週間後、この時期は嘉人さんと
同じように進学に伴って受診される方が
増えるので、もしかしたら一月後になるかも
しれません。」

私が申し訳なく思いながら言うと、

「分かりました。
では、明日、電話してみます。
先生も、どうか、嘉人を
よろしくお願いします。」

とお父さんが頭を下げた。

「こちらこそ。
ご理解くださって、ありがとうございます。」

私も頭を下げる。

そして、お父さんは、スーツの内ポケットから、名刺を取り出すと、裏に何か書き始めた。

「私の携帯です。
番号とアドレスを書いておきましたので、
何かありましたら、こちらにご連絡ください。
妻は、嘉人が障害児かもしれないという
現実を受け止めきれずにいますので、
もし、話が通じないような事がありましたら、
ぜひ、遠慮なく私に連絡ください。」

そう言って、名刺を差し出すので、私はありがたくそれを頂戴した。

「では、嘉人のこと、くれぐれもよろしく
お願いします。」

お父さんは深々と頭を下げる。

「いえ、こちらこそ、よろしくお願いします。」

私もお父さんに負けないくらい頭を下げた。

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