家庭訪問は恋の始まり
「そう。
俺は、仕事が一緒だから、後の事を考えると、
あまり追い詰めるような事は出来なくて、
つい冗談とも本気ともつかない態度を
取ってたのかもしれないな。
もっと、真剣に伝えればよかった。」

そう言う武先生は、いつしか顔から笑みが消えていた。

「夕凪先生、聞いてくれる?
俺の長ぁーい片思い。」

私は、返事もできずに、ただ、こくんと頷いた。

「俺、この学校に来る前は、秋川中学に
いたんだ。」

「えっ?」

それって、私が教育実習に行った?

「そこにね、とても熱心で一生懸命な教育
実習生が来てね。
すごくかわいくて、気づいたら、いつも目で
追ってた。
だけど、その子には大好きな彼氏がいてね。
時々、学校まで迎えに来てたんだ。
だから、俺は何も言わず、諦めた。
まぁ、言ったら、パワハラとかセクハラとか
言われかねないしね。」

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