家庭訪問は恋の始まり
私は、目を逸らしたいのに逸らせなくて落ち着かない。

「夕凪先生も分かってるとは思うけど、
人の口に戸は立てられないよ。
保護者との結婚は、教員を続けるなら、
誰に聞いても反対されると思う。
もちろん、ADHDの子を養育するのも
並大抵の苦労じゃないのは分かってるよね?
俺なら、そんな苦労は絶対にさせない。
だから夕凪先生、俺と付き合おう。
絶対に夕凪先生の気持ちを俺に向かせて
みせるから。」

いつもの冗談めかした所は、少しもなくて、武先生が本気なのは、痛いほど伝わってきた。

「あの…
ありがとうございます。
私なんかの事を、そんな風に思って
いただいて。
でも、私、武先生が好きだからこそ、そんな
条件で選ぶような事はしたくないんです。
武先生の事は、人として、教員として、
尊敬してますし、大好きです。
でも、それ以上には思えないんです。
ごめんなさい。」

私は、武先生に頭を下げた。

なのに…

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