家庭訪問は恋の始まり
「不便だろ?
こんな古臭いの、住みにくいったらないん
だけど、文化財に指定されてるから、壊す事も
できないし、勝手にさわれないから、
インターホンも付けられないだ。
勝手口は普通だから、夕凪もここを通るのは、
今日が最初で最後かもな。」

瀬崎さんは、そう言って笑った。

そして、門を開けてくれた年配の女性を紹介してくれる。

「夕凪、こちら、萩野美恵(はぎの みえ)さん。
うちでずっと家事をしてくれてるんだ。
旦那さんの安彦(やすひこ)さんは、庭師で
外回りの事をやってくれてる。
夫婦で働いてくれてるから、分からない事は
なんでも聞くといいよ。
多分、母よりこの家の事は詳しいと思う。」

そう言って、瀬崎さんは笑う。

「神山夕凪と申します。
よろしくお願い致します。」

私が頭を下げると、

「萩野美恵です。
よろしくお願い致します。」

と微笑んでくれた。

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