家庭訪問は恋の始まり
「じゃ、どうぞ、召し上がってください。
嘉人、食べるぞ。」

お父さんは、私の隣に座った嘉人くんに声を掛ける。

「うん! いただきます!」

元気よく手を合わせて、嘉人くんは食べ始める。

「いただきます。」

私もいただく。

「ん!! すごく、おいしいです!!」

優しい味付けで、肉汁が口の中いっぱいに広がって、幸せな気分になる。

「それは良かった。
ぜひ、また食べに来てください。
週末なら腕に縒りをかけて作りますから。」

「先生、また一緒にご飯食べよ。
パパのご飯、なんでもおいしいんだよ。」

嘉人くんは、得意気に話す。

「嘉人さん、ありがとう。
でもね、先生は嘉人さんだけの先生じゃない
から、嘉人さん家でほんとはご飯を
食べちゃダメなんだ。
だって、明日嘉人さんがみんなに、
『昨日、夕凪先生とご飯食べたんだ』って
言ったら、みんなが『うちにも来て!』って
言うでしょ?」
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