エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#5 月に2回の定時退社日

 ――環が住忠商事に来てから2週間が経った。この2週間は仕事に忙殺され、残業時間はここ数年で一番長くなっていた。

 環は子会社から栄転してきたこともあり、本当に仕事が出来た。最初は後輩への仕事の引き継ぎにある程度時間を割けたけれど、1週間も経てば、新しい取引先からの見積書の作成の依頼が数件入るようになり、それに伴う先方とのメール対応や電話対応、顧客管理などの量が増えていった。

 環が引き継いで来た大きな取引先とのやり取りも本格的に始まり、私の仕事量も2週間も経てばタスク表にはびっしりと予定が書き込まれ、二重線で消してもまた新しい仕事が増えるという事態に陥っていた。

 肝心の環は営業で殆ど会社にいないため、やり取りはメールか電話での事務的な対応に終始し、過去の思い出話に花を咲かせるなんて余裕は一切無かった。やり取りするときも周りに怪しまれないように敬語を使わなければならないので、変に気を遣う。

 おまけに少し休憩しようと思えば、後輩から声をかけられて引き継ぎのことで質問され、トイレに立てば新たな見積書、納品書、請求書の作成依頼。昼休みはご飯を買いに行く元気も無くなり、ぱったりと息絶えたようにデスクにうつ伏せになる。最近は帰る時間も営業の人と同じ位の時間帯になっている。

 ああ、私に十分な休憩と食事を下さい。
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