エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
――最初に梓と出会った時、不思議な子だと思った。知り合いでもない人間を、「困っている人を助けなきゃ行けないと思った」という理由で、自分よりずっと年齢の高い男たちから守ろうと声を上げて助けてくれた。女の子なのに。

 おまけに、猫を世話する僕のことを優しい、と言ったり、自分も猫を見たいと言った。初めて会った人間に、そこまで言える彼女が不思議でたまらなかった。

 人との関わりを避けてきた僕は、彼女のお願いを断っても良いはずだった。でも、僕は良いよ、と言ってしまった。何故かは、分からない。助けてもらえたお礼かもしれないし、久々に人と関わって、「優しい」と言われて嬉しかったのかもしれない。あの時の僕の気持ちは、今でも自分でもよく分からない。

 そこから交流が始まって、少しずつ僕の毎日は変わり始めた。彼女は僕がコンピューターに興味があることに関心を持ってくれたし、聞かれたくないことはそれ以上聞かなかった。コムギに懐かれなかった時も、彼女はまた僕と一緒に猫と会いに行きたいと言ってくれて、毎日会いに行くようになった。

 人と積極的に話してこなかった僕に、彼女は自分から自分のことを話してくれた。学校の話、テレビの話、本当に他愛のないことを色々話してくれた。

 相変わらず学校では殆ど誰とも話さなかったけれど、どこまでも自然体の梓の前では僕も普通に話せるようになっていた。

 そして、初めて猫と彼女が触れ合った帰り道、彼女は僕を「友だち」だと言ってくれた。友だちを作ることを諦めていた僕にとって、頭の中が混乱した。でも、嬉しかった。

 ――僕に、友だちが出来た。
 
 それから僕が梓を見る目は、変わっていった。大切な友だち。梓が居ることが当たり前になっていて、彼女が笑ったりするところを見るのが好きになっていた。
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