エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#10 告白

 午後六時になるとオフィスにチャイムが鳴り響いた。定時退社の日は、みんな表情が明るい。

 ここ二週間、残業続きだった営業事務の子たちも今日はチャイムの音が鳴ると、明るい声で「お疲れ様でした」といって帰っていく。服装もいつもに比べて気合いが入っているように見えた。そういえば昼休み、合コンがどうとかひそひそ話をしてたっけ。

「お疲れ様でしたー」
「お疲れ様」

 他の子と同様に明るい声で席を立つ桃子ちゃんを見送ると、私は大きく背伸びをして、午後の仕事で凝った肩周りを解した。時計を見ると、時刻は午後六時十分。昼休みにカンパネラ食堂を調べてみたら、ここから電車で一駅の場所にあり、歩く時間も含めれば三十分もあればつきそうだった。

 いつもならただ帰るだけの私も、今日ばかりは化粧直しのために、僅かに出来た時間を使ってお手洗いへと向かった。洗面台の前に立つと、疲れているのか顔の血色が悪い気がした。もともと薄化粧な私は一層血色の悪さが引き立って見える。

 おまけに、私の今日の服装はグレーのジャケットに白いシャツ、黒いパンツという何とも地味な格好で、かしこまった食事向きとは言えない。

「はあー……」
 
 思わずこぼれるため息を自分で聞いて、私も一応女なんだ、と一人、苦笑した。社会人になってから恋愛もせずにずっと営業事務一筋で仕事をしてきた。むしろ、仕事以外で積極的に男性と関わろうとはしてこなかったし、恋愛を避けてきた自分がいる。

 それが、環に食事に誘われただけでこんなにそわそわする自分がいるなんて。恋人でもなくて、仲が良かった幼なじみと食事するだけなのに。肩まで伸びた黒髪を櫛でとかし、口紅を塗り直す。チークも少しだけ塗り直した。
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