エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#17 さよならを言う日 ―過去・環Side―

 僕が梓にお母さんの話をしてから、僕の中で何かが解けていって、もっと梓に自分をさらけだせるようになった。

 さすがに初めて梓の家族に紹介された日は、緊張で何も言えなかったけれど、梓の家族は温かくて、そんな僕でも受け入れてくれた。

 もう駄目かと思ったけれど、何回か食事にも誘ってくれた。梓のお母さんが作ってくれた温かいご飯は身に沁みたし、サラリーマンの梓のお父さんはコンピューターの知識が少しあるらしく、コンピューターの話で話が弾んだ。

 僕と梓の家は全然違ったけれど、僕を家族の一員の様に自然に受け入れてくれたことが嬉しくて、僕は孤独を感じずに済んだ。

 それから、僕と梓はコムギの餌やりや公園でのおしゃべりだけでなく、遊びにも出かけるようにもなっていた。

 梓は他の友だちを何度か僕に紹介したがったけれど、あまり大勢の人と打ち解けられる自信は無かったし、何より僕には時間が無くて、出来れば梓と二人で居たかったから断っていた。それでも梓は僕との時間を大切にしてくれた。

 ――僕にはお母さんのこと以外にも言わなきゃならないことがある。


 でも僕は梓と一緒に居たくて、先延ばしにして、それを言わずにいた。

 気がつけばもう、夏休みの手前まで来ていた。
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