エリート社員の一途な幼なじみに告白されました

 梓はそれを聞いて赤くなって固まってしまった。
 
 他の質問にも適当に答えながら俺は梓のことをずっと意識していたが、梓はお酒の量がどんどん増えていき、ふらふらになっていた。

 俺の告白の代償として自由時間は質問攻めに遭う羽目になり、結局梓と話せたのは最後の自由時間だった。

 ――俺は酔った梓を抱き留め、もう一度告白した。もう、俺の心の中は吹っ切れていた。

 沢山の人間がいる場で、俺と梓にしか分からない方法で俺の気持ちを梓にもう一度はっきり伝えることが出来て、かえって踏ん切りがついた。

 『欲しいものがあるなら自分から取りに行きなさい』

 新しい母親に口酸っぱく言われてきたことを、俺は得意分野のコンピューターで生かし、仕事にも打ち込んできた。

 でも、梓のことになると、恋愛経験がないから、梓に嫌われたくないからとたった一度の告白で避けてしまった。

 でも、それではいつまで経っても俺と梓の関係は変わらない。いつか誰かに取られる位なら、経験が無いなりに梓を振り向かせてみせる。

 大勢の前で告白して、そう決めた。

 ……今、梓は何をしてるだろう。思い切って電話してみようか。そう思って梓の電話番号を押し、結局10桁目で押すのを止めた。

 俺みたいに二日酔いになっているかもしれない。原因を作ったのは俺だし、明日梓が来てくれることを信じて、ありのままの気持ちを梓にぶつけよう。

 しばらく何も食べられそうになくて、俺は休むために目を閉じた。

 うつらうつらと浅い眠りに落ちていく中で、俺は梓と別れた時のことを夢に見た。
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