仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「明後日、久我山家に行くのか?」
「そうだけど」
「聞いていないが」
非難するような言葉に、今度は美琴がため息を吐いた。
「言う暇なんて無かったでしょう? 一希はずっと帰って来なかったんだから」
「連絡方法などいくらでもあるだろう?」
「メッセージアプリのこと? 今まで一度も返事が来なかったから、使ってないのかと思っていたわ」
返信が無いのは本当だが、読んでいるのは知っていた。けれど、つい嫌味を言いたなる。
「既読になっていただろう?」
(普通、一言でも返信入れない?)
不満を感じたけれど、ここで怒っては、美琴が一希からの返信を心待ちにしていたように思われそうだ。
「そうだった? まあどうでもいいわ。私の予定だけど、明日は鈴本の家、明後日は久我山家に挨拶に行くわ。四日は友達と会う予定だから」
「……久我山家には俺も行く」
「そう」
予定を聞いて来た時点で、想定していたので驚かなかった。
一希は妻の美琴に付き合うのではなく、ただ祖父に気を遣っているだけなのだ。
長年暮らした鈴本家の方にはなんの関心も示さないところから明らかだ。
(相変わらず、あからさまだわ)
それ以上話す気も無くなり食事の続きをしようとすると、一希が再び話しかけて来た。
「四日は誰と出かけるんだ?」
「え?」
「友人の名前は?」
咄嗟に返事が出来ずに、口籠る。
(慧だと言ったら嫌味を言われるかも……慧にも迷惑がかるかもしれない)
以前、慧と二人で話し込んだとき、周囲に誤解を与えるなと文句を言われたのを思い出した。