仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
祖父があえて話題を変えて来たことに気付いた。一希との関係を追及したいけれど、実家の件も捨て置けない。
「お祖父さまが恵美子さんを援助したくない気持ちはよくわかりました。私も今、複雑な気持ちになってます。でも弟達には何の責任もありません。なんとか助けてあげたい」
「確かにあの子達には罪はないな。かと言って後妻の要求通りに援助をするつもりなはい」
冷ややかに突き放され、美琴は項垂れた。
(どうしよう……)
けれど、考えてみれば、自分だって父と恵美子と同じだ。
自分の手に負えないことを自己満足で抱えこみ、それを人の力を借りて解決しようとしているのだから。
そう気付くと、しつこく援助を頼めなくなった。
ならば一希との件を聞こうかと思っていると、一希が部屋に戻って来てしまいそれも出来なくなった。
一希は部屋に流れる張り詰めた空気に気付いたのか、僅かに顔色を変える。
「何か、ありましたか?」
「いや、何もないよ。久しぶりに孫との会話を楽しんでいたんだよ」
祖父は先ほどまでの会話など無かったかのように、笑みを浮かべる。
「そうですか……」
一希は疑うような視線を美琴に向ける。
それから、机に置いたままのファイルに目を止めた。
祖父がいるから手にとることは無かった。
けれど、いつまでもじっとそれを見つめていた。
「お祖父さまが恵美子さんを援助したくない気持ちはよくわかりました。私も今、複雑な気持ちになってます。でも弟達には何の責任もありません。なんとか助けてあげたい」
「確かにあの子達には罪はないな。かと言って後妻の要求通りに援助をするつもりなはい」
冷ややかに突き放され、美琴は項垂れた。
(どうしよう……)
けれど、考えてみれば、自分だって父と恵美子と同じだ。
自分の手に負えないことを自己満足で抱えこみ、それを人の力を借りて解決しようとしているのだから。
そう気付くと、しつこく援助を頼めなくなった。
ならば一希との件を聞こうかと思っていると、一希が部屋に戻って来てしまいそれも出来なくなった。
一希は部屋に流れる張り詰めた空気に気付いたのか、僅かに顔色を変える。
「何か、ありましたか?」
「いや、何もないよ。久しぶりに孫との会話を楽しんでいたんだよ」
祖父は先ほどまでの会話など無かったかのように、笑みを浮かべる。
「そうですか……」
一希は疑うような視線を美琴に向ける。
それから、机に置いたままのファイルに目を止めた。
祖父がいるから手にとることは無かった。
けれど、いつまでもじっとそれを見つめていた。