仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「離婚についても美琴の希望に沿うようにする。直ぐには無理だがなるべく早く出来るよう調整していくつもりだ」

「えっ?!」

淡々と語られた一希の言葉に、美琴は思わず高い声を上げてしまった。

一希は困ったような表情になる。

「美琴が早く離婚したいのは分かっている。すまないな」

「い、いえ……そうじゃなくて」

(どうして急に離婚を受け入れる気になったの?)

あれほど頑なに離婚はしないと言い張っていたのに。

この態度の変化はなんだろう。

けれど一番困惑しているのは、自分の気持ちだった。

(私……一希に離婚するって言われてショックを受けてる)

離婚したいと言ったのは本心だった。

今だってこのまま暮らしていても幸せはないと分かっている。

それなのに、離婚の言葉に動揺してしまったのだ。

(一希が優しくなったから……)

離婚の話をしている今でさえ、かつての刺々しさは消え、美琴に対する気遣いを感じるのだ。

彼の態度が緩和していくにつれ、美琴の頑なだった心にも変化が起きていた。

目を伏せて黙り込んだ美琴に、一希が言う。

「財産分与などは出来るだけのことはする。離婚後の生活は心配しなくていい」

「財産分与なんて……結婚して一年も経ってないのに」

一希との結婚はお金を抜きに語れないはずだ。しかし現実的な話をする気になれない。

その後、言葉少ながら話しかけて来る一希に、まともな返事が出来なかった。


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