仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
「彼とは友人ですし、私は再婚なんて考えていません」

「今はそうでも一希と離婚したあと、いつまでも一人ではいられないでしょう。まああなたの将来については私が口出すことではないわね」

寛子はそう言うと口を閉ざし美琴をじっと見据えて来た。

（観察されてる？）

「あの、なにか？」

「あなた直前になって一希との離婚をごねたりはしないわよね？」

「どういう意味ですか？」

「離婚後、一希は新しい妻を迎えるからあなたに邪魔をされたら困るわ」

「……新しい奥さんがもう決まっているということですか？」

内心動揺しながら口にすると、寛子はゆっくりと頷いた。

「ええ。だから約束して頂戴。私達の邪魔をしないと」

寛子は念を押すように言う。

胸が苦しくなり美琴は寛子から視線を逸らし俯いた。

新しい妻は観原千夜子で間違いないだろう。

（一希はこのことを知っているの？）

彼が離婚を進めていたのは確かだ。

けれど、千夜子と再婚するためとは言っていなかった。

逆に彼女を遠ざけようとしているのだから。

義母の言葉と最近の一希の言動は矛盾する。

かといってそれを指摘して言い合う気力が美琴には無かった。

寛子は自分の話が終わると美琴に帰るように言い、部屋から追い出した。

自分の部屋に戻ると、急に心細さに襲われた。
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