仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
テーブルを挟んで向かい合わせで座ると、慧は嬉しそうに言った。

「こんなところで再会するとは思わなかったな」

「ほんと、ここで昔の知り合いに会うなんて驚いた」

「俺も。美琴、なんか飲む?」

「アルコールなしのものがいいかな。あまり強くないの」

「了解」

慧はテラスに居たウエイターに合図を送り、ソフトドリンクと自分のカクテルをオーダーする。

その仕草はスマートで洗練されており、育ちの良さを感じさせる。

かつての元気いっぱいの男の子の面影は見られなかった。

「もしかして慧って、名家の御曹司だったりするの?」

美琴の発言に、慧はとても嫌そうな顔をした。

「その御曹司っての嫌だ」

「だってなんて表現していいか分からないから……このパーティに出席してるからには名家の人なのかと思って。中学生のときはそんな気配全くなかったけど、今はそれなりに見えるし」

「全く無かったって、お前結構はっきり言うのな……でもまあ、実家はそれなりだよ。【葉月ホテル】って知ってる?」

「知ってるよ。全国展開しているホテルでしょう?」

一泊十万以上する高級ホテルから、リーズナブルなホテルまで、幅広い客層をターゲットにしている大手の会社だ。

「そこが俺の家」

「えっ? 凄いじゃない!」

慧は正真正銘の御曹司だ。

「でもそんな人がどうして、普通の公立中学にいたの?」

一希は大学まである名門私立の一貫校に通っていた。
友人もそこで知り合った、家庭環境の近い人がほとんどだ。
御曹司とはそんなものだと思っていた。

「父親の方針。公立中学は様々な立場の人と過ごせる最後の機会だからって。偏った考え方にならないように、俺たち兄弟は中学まで公立に通ってた」

「俺たち? そう言えば、お兄さんがいたんだっけ?」

「ああ、四つ上」

(一希と同じ年だ……観原千夜子とも)

「ねえ、お兄さんはどこの高校と大学なの?」

慧が答えたのは、一希の卒業した高校。そして、慧自身も高校からはその学校に通ったとのことだった。
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