仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「美琴こそどうしてここに? その格好なら招待客だよな?」
今度は慧が質問して来た。
「夫が招待されていて、私はその同伴」
「はっ?」
慧は美琴が結婚していると知らなかったのか、驚愕の表情を浮かべていた。
「さっき、夫と挨拶回りしていたんだけど、見かけなかった?」
「……俺は仕事で少し遅れたから。来たばかりなんだ」
「そう。神楽一希って知ってるでしょう? 彼と結婚したの」
そう告げると、慧は更に衝撃を受けたようで、「嘘だろ?」と呟いた。
「……でも、神楽さんは旧華族久我山家の令嬢と結婚したって。俺は披露宴に出てないけど、それは間違いないはずだ」
「それ、私のこと。久我山俊三は私の祖父なの。それで一希とお見合いして結婚したの」
「美琴が、久我山俊三の孫?」
「……やっぱり、驚くよね」
慧が御曹司だったのにはとても驚いたけれど、慧からしたら美琴が久我山家の娘だと言う方が驚きだろう。
「まあ……お前、お嬢様の気配ゼロだったからな」
「それは、お互いさまだよね」
「……ほんと、驚きだな」
とりあえず落ち着こうと、ふたりともドリンクで喉を潤す。