監禁監視盗聴盗撮、何でもします!好きだから!

「クラス替え表、見えないや。」
「ほい。」
「あらあら。」

ㅤクラス替え表がはってあるホワイトボードがロッカールームの前に沢山並んでいる。今の時代、しかも学年につき最低6クラスはあるのにこんなアナログな表示な仕方でいいのかと思うがそれはあえて口には出さず。
大勢の人ごみの中、背の低い楓には到底1番前のホワイトボードなんてみえない。なおの袖をくいっと引っ張ると、なおは頷いて楓を持ち上げた。まるでお人形さんでも運ぶかのように慣れた手で抱える。

「楓ちゃんよく見えますか?」
「うん、よく見える。取り敢えず3組までは僕達の名前ないよ。」

かく言う私もあんまり背の高い方ではないので、2人にクラス替え表を任せる。その間、人混みの中で先程の男子生徒を探したがやはり直ぐに見つけたりすることは出来なかった。

「みつけた!僕5組!薫ちゃんも5組だよ!」
「俺は7組か……。」

なおががっくり肩を下ろして、それから楓も腕から下ろした。楓はやったね!と私の手を握りぴょんぴょん跳ねる。

「あれ。そういえば、咲希ちゃんはどうしたんですか?」

私が2人に聞いた時、2人の表情が途端に暗くなった。浜松咲希、通所咲希ちゃん。楓ちゃんの幼馴染で、なおさんに負けず劣らず楓ちゃんが好き。いつも3人で行動しているのに、朝から咲希ちゃんの姿は見ていなかった。
不思議そうな薫の顔を見て、2人が気まづそうに口を開く。

「咲希はなー……。」
「咲希ちゃんね、生徒会でしょ。昨日入学式準備で登校して先にクラス替え見ちゃったの。そしたらさ。」

楓が大きくため息をついた。

「帰ってきたら、「楓ちゃんと同じクラスじゃなかった。」しか言わなくて。……今日は寝込んでおやすみ。」
「成程……。」

知らない人からしてみればそんな馬鹿なと言いたくなるような事だが普段の言動からしてみれば簡単に想像できてしまった。苦笑いしかできない。

「……取り敢えず、教室行きましょうか。」

まだ、暗い顔をした2人の背中を軽く押す。

「俺、昨日咲希に「ざまぁみろ!」って言われたのは俺も違うクラスだったからか……。」

私と楓は顔を見合わせて、複雑な気持ちで笑った。
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