残念な王子とお節介な姫

8月19日(月)

家に帰ると、結の荷物がなくなっていた。

がらんとした部屋。

結と暮らしたのは、ほんのひと月ちょっと。

辛かったけど、幸せだった。

そこに結がいたから。



俺は、水を飲もうと冷蔵庫を開けた。

なんで…

結…

涙が止まらない。

冷蔵庫いっぱいに結の手料理が並んでいた。

肉じゃが、きんぴら、大根の煮物、キャベツのゆかり和え、ほうれん草のお浸し、煮魚、鳥の照り焼き、玉子焼き…

結…

会いたい。



そうだ。

結はいつもそうだった。

俺が何も言わなくても、俺のために掃除をして、洗濯をして、料理を作ってくれた。

それが当たり前のように。

いつも俺を気遣ってた。
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