残念な王子とお節介な姫
「………奈々。」

「え?」

姫が驚いて顔を上げる。

「奈々、好きだよ。
俺と、付き合ってくれないか?」

姫の顔がくしゃっと崩れて、目を潤ませる。

「………はい!」

姫が口を開くと同時に、目から大粒の涙が零れ落ちた。

俺は、姫を抱き寄せて、

「待たせてごめん。
もう泣かさないから。
俺が全力で守るから。」

と言った。

姫は、俺にしがみついて、

「課長が好きです。
ずっと好きでした。」

と言ってそのまま泣いた。

俺はどれだけ姫を、奈々を苦しめて来たんだろう。

奈々は、どれだけの想いを抱えながら、今まで俺を支えて来てくれたんだろう。

夏にあんなに辛い事があったのに、今、こんなにも満たされて、こんなにも幸せなのは、ずっと奈々がそばにいて支えてくれてたからだ。

これからは、俺が奈々を支えてやらなくては。

俺は、姫の顎を持ち上げて、触れるだけの軽いキスをした。

それだけで、なんて心満たされるんだろう。

胸の中いっぱいに幸せな思いが充満していく
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