残念な王子とお節介な姫
2人っきりで、春山に聞いた雰囲気のいいジャズバーに連れて行く。

伊藤はいつもの居酒屋でない事に戸惑っているようだった。

「宮本さんは、ここ、よく来るんですか?」

伊藤が聞いてきた。

「うん。
…って言いたいけど、ほんとは初めて。
伊藤と来てみたかったんだ、ここ。」

春山がここで勝負懸けろって言ってたから。

「宮本さんがそんな事言うと、女の子はみんな
勘違いして後で大変な事になりますよ。
修羅場になりなくなかったら、もう少し
言葉を選んでください。」

「ん? 勘違い? 何が?」

伊藤、それは勘違いじゃないよ。

「自覚ないんですか?」

伊藤が憮然として言う。

「んー、ま、それなりに?」

俺は、王子って言われ続けて、かれこれ7〜8年になるからな。

「じゃあ、心臓に悪い台詞言うの、やめて
くださいよ〜」

「ムリ。」

「は? 何でですか!?」

「だって今日は、結を口説きに来たんだもん。」

「え!?」

伊藤が驚いてる。

春山が言ってたんだ。

さらっと名前で呼べって。

「結、かわいい。
そんな結が好きなんだ。
俺と付き合おう?」

俺はそう言って、伊藤の手を握った。
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