残念な王子とお節介な姫
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その日、俺が帰宅すると、冷蔵庫に大量のお惣菜がストックされていた。

テーブルの上に結からの手紙。


『海翔、お疲れ様。

昼間、体調が良かったので、お惣菜をいくつか
作っておきました。

朝、晩、好きな時に食べてね。 結』


結の手料理。


俺、幸せなんじゃないか?

好きなひとがいて、
好きなひとと一緒に暮らせて、
好きなひとが食事を作ってくれる。

何より、好きなひとが俺の子を産んでくれる。

これで、文句言ったら、バチが当たるよな。

これでいいんだ。

これで十分、幸せなんだから。

これ以上、無理に求める必要はない。


結、だから、安心してここにいて。

必ず、結も、お腹の子も幸せにするから。

俺、残業200時間でも頑張るよ。

出世なんて興味はなかったけど、結のために頑張ろうと思った。

取締役になれたら、結も喜ぶかなって思った。

だから、寂しがる結を残して、大阪に来た。


俺は、今、決意した。

結を犠牲にして、大阪に来たんだ。

だから、結のために、俺は、社長になる。

取締役なんて半端な事は言わない。

30歳で課長なんだ。

40歳で部長、50歳で役員、60歳で代表になる。

結に不自由のない生活をさせてやる。


結、愛してるんだ。

胸が苦しくて張り裂けそうなくらい、愛してるんだ。
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