愛のない部屋
質問には答えずに黙ってタキを見ていた。
「マリコのことをおまえが知ってるとは驚いた」
「……うん」
「マリコのことでアイツは嘘をついたのか?」
こくりとうなづくと、タキは苦笑した。
「マリコか…」
「タキも知ってたんだ?素敵な人?」
「どうかな」
微妙な反応を示すタキ。
「タキの奥様の方が素敵だよね。今度、会わせてね」
「ああ」
否定しないところがまた愛を感じるんだよね。
袖で涙をぬぐい、立ち上がる。
もう大丈夫。
「取り乱してごめん。お昼にしよう?」
3人分用意した茶碗を見て、寂しい気持ちになるのはなんでだろう。
今までだって私にはタキだけだったのに。
「お、美味しそ~」
私に合わせてテンションを上げてくれたタキに味噌汁を渡し、
「今日のこと、峰岸には言わないで」
そうお願いした。
「…もう味噌汁、飲んでいい?」
さっそく箸を持ったタキはお願いを利いてくれるはずだ。
「これも食べてみて?」
見た目は卵が少し崩れてしまったが、オムライスは自信作。
せっかくアイツの言う
"可愛らしい"料理を作ったのにな……。
バカ。