愛のない部屋

また増えた借りに、申し訳なさが募る。


「ありがとう」


「ふぅん。素直なとこもあるんだ」


「うるさい!」



鍵を開けて部屋の中に入る。



もう寝たい。



夕飯もシャワーも全部後回しにして、ベッドに直行したい気持ちを抑えて峰岸に尋ねる。



「夕飯は?」


ネクタイを外しながら、峰岸は冷蔵庫を覗いた。


「昼からなんも食ってない」


「……座って待ってて」



冷蔵庫を閉め、峰岸は不思議そうにこちらを伺う。



「だから、私が作る」



昨日までの私なら、峰岸なんかに手料理を作ろうなんて考えもしなかっただろう。


だけれど、今日は少し違う。



タクシーを降りてから家までのわずかな距離でも
私が濡れないように傘を貸してくれた。



おまけに傘のスペースも私の方が多くとってしまったことを、峰岸の濡れた背広が証明している。




峰岸は、

タキが認めるくらい



――優しい男だ。









「冷蔵庫にあるもので良いなら、アンタの分も作る」


「料理できるんだ?なんか意外」


「意外で悪かったわね」


口を開けば、悪態ばかりだ。


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