愛のない部屋

引き込まれるストーリーのラストは、永遠の愛を誓ったはずの2人が身分の差で結局、別れてしまうものだった。


大好きな作者が書いた恋愛小説で期待をしていたのに、バットエンドで落胆した記憶がある。

好きなのに、両思いなのに
別れなければいけないその理由を、私は今まで納得することができなかった。

でもやっと……。



「私のこと、愛してないって言ってよ」




好きだけれど、別れなければならぬ理由。


――それは相手の、幸せを誰よりも願っているからだ。



峰岸もきっと、私よりマリコさんと一緒になった方が幸せだ。

そもそも私には峰岸を幸せにできる自信なんてなかった。



「マリコさんを愛してるから私のことはどうでもいい、って言ってくれた方がすっきりするの」


『マリコに恋愛感情は無いよ』


「不倫までした恋の諦める理由を、私にしないで」


『どういう意味だ……』


低い声。


峰岸はきっと眉間にシワを寄せているだろう。
また不機嫌な顔をしているのだろうね。

< 283 / 430 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop