愛のない部屋

「せっかくの誕生日にマリコさんとではなく、私と過ごそうと思った神経が信じられないよ。マリコさんの力になりたいから、マリコさんのことだけを考えるんでしょ?でも今のアンタのやってることは、凄く中途半端だよ」



中途半端が嫌だから、私よりマリコさんを優先させると言っていたのに峰岸の行動はおかしい。



『……ごめん』



自らの言動の矛盾に、峰岸が気付かないはずがない。


「私とマリコさん、アンタは両方を欲張って守ろうとしているんだよ」


『…どちらも大切なんだ』



優柔不断な男。
有名な話だよね。優しい男は彼女だけでなく、みんなに優しい。


「それじゃぁ、はっきりさせてよ。どちらかを選んで。もう私、アンタの家に戻るつもりはないの」


『は?』


「アンタがマリコさんを見捨てられないというのなら、私を捨てて」


こんな失恋の仕方も有りかもしれない。愛し合っている2人が別れなければいけない理由なんて、この世の中にたくさん転がっているのだとやっと分かった。

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