愛のない部屋

愛に溢れた部屋で


帰って荷造りを再開した。


「荷物、相変わらず少ないな」



全て車に乗ったダンボール箱。


「だって家具はなにも買わずに、備え付けのものがあったし」


車に乗り込み、峰岸の家へと向かう。

もう結構いい時間で、眠気に襲われる。



「着いたら起こしてやるよ」



ハンドルを握っていない方の手で、私の頭を優しく撫でた。



「ううん、起きてる」



せっかくの穏やかな夜に、寝てしまうなんて勿体無い。

夢の中で峰岸とお喋りするよりも、車内で彼を見ていたいから。


「マリコさん、良い人だったね」

「ああ」



私の負担にならないように、気の重いことはさっさと終わらせてくれた峰岸の配慮には感謝をしたいけれど


ただ……、



「急すぎてびっくりしたよ」


マリコさんに話す心の準備が全くできていなかったのに。



「マリコのことで喧嘩になるんだったら、その原因をさっさと取り除きたかっただけ。篠崎のところに逃げられたりしたら、大変だからな」


「篠崎さん、いつも私のことを……」



――守ってくれる。

なんて続けても良いのだろうか?

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