愛のない部屋
「沙奈……」
私に気付いた峰岸は、小さく笑って手招きした。
拒絶されなかったことが嬉しくて、ソファーに座る。
「はい、ありがとうございます。滝沢さんも、ええ……ではおやすみなさい」
電話を切り終えた峰岸はなにも言わずに、私の髪を弄ぶ。
いつの間に繋がれた手は、恋人繋ぎになっていた。
「身体、大丈夫?」
「……う、ん」
先程の行為を思い出して顔がカッと熱くなるのを感じると、すぐに深い深いキスが降ってきた。
触れ合う唇から、貪るような行為から、
峰岸が私を求めているように感じた。
「大丈…夫、だよ」
乱れた息を調えながら伝える。
「…うん?」
「私が傍にいるから、大丈夫だよ」
峰岸の不安そうな苦笑交じりの表情は、なにか嫌なことが起きたのだと予想させる。
でも、大丈夫。
もう私は峰岸から逃げたりしないし、傍で温もりくらいは分けてあげられる。
「俺は何度も何度も沙奈に救われてんな」
「そんなことないよ」
「今だっておまえが隣りにいてくれるだけで、全てが満たされる」