愛のない部屋

静かにドアを開け、中を覗き込めば笑い声が聞こえた。


峰岸の肩に手を置き、心底楽しそうに笑っている樫井さんが見えた。

峰岸も微笑んでいて、胸が痛む場面に遭遇してしまったようだ。


早速、こんな光景を見せられるとは…頭が痛い。



親しげな2人。
たぶん篠崎はこうなることを予期して、私に予め忠告してくれたのかもしれない。



「失礼します」



少しは心の準備ができていたせいか、そこまで動じることなく私は一歩を踏み出した。




「宮瀬さん、貴重な時間をごめんなさいね」


品のある穏やかな声。



「いえ、宜しくお願いします」


彼女は優しく私を迎え入れてくれた。





嫌な人だったら、凄く意地悪な人だったら、
まだ良かったのに。


どうして峰岸と釣り合うくらいの素敵な女性なのだろう。



「宮瀬さん、早速なんだけど……」


「はい……」


当たり前だけど峰岸は仕事モードで。
今朝のキスのことは夢ではないかと疑える程に淡々とした口調で話し掛けてきた。


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